公的機関の調査から見る保育士の離職率!離職対策はされている?
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一般的なイメージとして、「保育士は離職率が高い」と言われています。「基本給が低い」「サービス残業など時間外労働に関する労働環境が改善されない」といった印象が強いです。
そのため、せっかく保育士の資格を取得して園に就職しても、その過酷さから人が現場から離れてしまい保育士の人手不足が解消されないという問題が、世間的にも認知され始めているのです。
では、実際に保育士の離職率は数字上どのようになっているのでしょうか。どのような点で離職を決意してしまうのか、それらを見ていきましょう。
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厚生労働省の情報から見る保育士の離職率と平均勤続年数
実際の離職率について厚生労働省がデータを発表しており、平成25年の調査で「10.3%」と公表されていることが確認できます。具体的な人数に直すと、約30万人の勤務者に対し約3万人が離職したということです。
なおこの10.3%は公営私営両方の保育園を足した数で見た平均離職率となっており、公営と私営を分けて考えた場合、公営保育園の場合7.1%、私営保育園の場合12.0%と大きな開きが出てしまっているのも特徴です。
平均勤続年数に関しても、「5年から10年」というおおまかな数字が出ており、現役新卒で保育士資格を取得した場合、半数近くが20代のうちに保育士という職から離れてしまうということが分かっています。
他の産業での離職率などと比較すると大きな数字とは言えませんが、離職した人の転職先が同業界である場合と、保育業界自体から離れてしまう場合を比較して考えると、充分深刻な数字と言えるのではないでしょうか。
保育士が辞めたいと思う『2つの理由』
転職サービスを運営している会社など、多くの企業が保育士の離職に関する調査を行っており、それらを参考にしてみると、「給与面」「時間外労働」の2点が保育士が辞めたいと思う主な理由として挙げることが出来ます。
保育士を辞めたいと思う理由1「給与面」
まず給与面ですが、保育士の平均年収は約300万と言われており、これは国政でも問題として度々取り上げられる額とされています。賞与が年2回15万と考えると、ひと月の給与額が22.5万円。
福利厚生などを差し引けば手取りは10万代となり、勤務時間や勤務内容を考慮するとこの給与が「見合った額」と判断できる人はなかなかいないのではないでしょうか。
また年収300万はあくまで平均ですので、もちろんこれより月給が低い・賞与がないという条件で働いている保育士も数多く居ます。
保育士を辞めたいと思う理由2「時間外労働」
もう一つの理由として挙げられる「時間外労働」に関しては、保育業界も含めた教育業界に共通して言える問題とされています。
授業の予習・報告レポートの作成など、子供の教育に関する時間の費やしは具体的な目途やラインが無いため、「どこまでが勤務内容なのか」という判断がハッキリさせられず、結果として「時間外労働」として扱われてしまうという問題点です。
勤務時間内に作成を終えることが出来ない量の提出物の要請などは、運営の不備として扱うことも出来ますが、実際に園や外部組織に訴えることが出来る人も少ないですし、「力量不足」として自己責任扱いされてしまう風潮も現代では無いと言い切れません。
保育士への就業希望者が増えない理由
「業務に見合わない給与」「当たり前として扱われる時間外労働」の問題により、保育業界は離職率が高く、また再就職を希望する人も多くありません。
その理由もやはり、さきほどの2点の問題がなかなか解消されないためと言うことが厚生労働省の公表したデータから読み取ることが出来ます。
労働環境の改善以上に再就職をためらう理由として挙げられたものが「子育てや家庭との両立」という点です。現在、男性保育士の割合は全体の4%ほどしかいません。
出産に関しては多くの保育士が休職や退職をせざるを得ない状況にあるほか、保育士の給与の低さ・労働時間の長さという面でも、夫婦のうち育児による長期休職や退職を求められてしまう職業になりやすいと言うことが出来ます。
保育士を離職した後に就く『3つの仕事』
保育士を離職した場合、保育士としての経験を活かした職場を選択するか、まったく一から経験を積み直すという選択をするかで具体的な転職活動が異なってきます。
ここでは、主な転職先として候補が挙げられる業種のメリットやデメリット、保育士経験が活かせるかどうかなどを見ていきます。
院内保育所・事業所内保育所・小規模保育所
病院内や企業内に設立されている、小規模の保育所への転職を行う人も多くいます。まさに園での経験が活かせる職場として、転職活動が有利になるという利点もあるでしょう。
一つ一つの採用人数・採用割合を見ると狭き門ではありますが、結婚後の男女共働きが一般化してきた近年では院内保育所や事業所内保育所の設立に注力する企業も多く、母数自体が増えてきていますので転職先に選択するという人も多いです。
大中規模な園より、保育士一人一人へのサポートや福利厚生、有給消化への環境、園の設備や施設が充実しているところも多く、預かる園児の数が少ないという点からも離職率の低い職場となっています。
一般事務
業種に関わらず、内勤として一般事務業に転職するという保育士も多くいます。経理事務や営業事務など、部署によりますが基本的に社内の人とのみ連絡を取り合い業務を行っていきます。
オフィス系ソフト(エクセルやワード)などを扱うスキルが求められるほか、大学卒や専門卒以上の学歴を求められることもありますが、基本的に経歴不問として採用活動を行う企業が多く、保育士の転職先としてのハードルはあまり高くありません。
職歴・学歴不問として募集しているところでは給与の低さや勤務量なども保育士の頃と大差がないという企業もありますので、その点のみで言えば転職してもメリットがなかったと判断する人も多くいる職種です。
接客業
飲食やサービス業全般の接客業は、基本的に採用のためのハードルも低く、保育士としての経験を活かし接客業に転職するという人も多く見られます。
元々接客が好きで保育が苦ではなかったという人の場合、適性も高く自身の特性を活かし働き続けられるという人も多いでしょう。ただ、飲食や販売などのサービス業の場合、低賃金が問題化されているのも事実です。
時給制を採用している店舗や企業も多く、シフトによっては定額的な給与が見込めない不安定な職場として、また月給制や年俸制を採用している企業や店舗ではやはり時間外労働などが多発しやすく、問題視されやすい業界とも言われています。
【最新版】離職率の低い保育園の『5つの特徴』
給与が高い、休みがとりやすい、業務の負担が重すぎない、職員同士で連携が取りやすいなど、それらが叶う自分の理想の保育園で働くことが出来れば、それ以上のことはないかと思います。
では、実際に離職率の低い園はどのような特徴があり、充実した園として機能しているのでしょうか。
【1】給与が高い
大学卒1年目の平均的な給与が「福利厚生込みで月額20万」と言われています。これを目安に、自身の最終学歴・勤務年数と照らし合わせ、給与が妥当かどうかという判断が行えるのではないでしょうか。
また「賞与があるかどうか」も給与を大きく左右する要素となります。この賞与に関しても「1か月分」なのか「半年分」なのかでもらえる額が大きく変動してしまいますし、それ以外にも残業代が「みなし残業か否か」で月額は大きく異なります。
その他、安定した職場の特徴として「家賃手当てがある」「交通費が全額支給である」といった要素も大きく、これらが充実した園は、やはり離職率が低い園として評価が高くなっています。
【2】人数にあった仕事量になっている
保育園と言うのは、預かる園児の年齢により、配置される保育士の数が定められています。0歳児3名に対し保育士1人、1~2歳児6名に対し保育士1人、3歳児20名に対し保育士1人、4~5歳児30名に対し保育士1人というのが国の定めた基準です。
この基準のほか、「定員90名以下の保育園の場合常時プラス1人の保育士を配置する」「常に2人を下回ってはいけない」といったような決まりが定められており、各自治体で基準を設ける場合も、まずはこの基準を遵守しなければいけません。
【3】自治体や園の方針として基準を下げているところもある
自治体や園の方針として、「1~2歳児6名に対し保育士1人」という基準を引き下げ「1~2歳児5名に対し保育士1人」と言った人数割合で保育士を雇用している園もあり、このような園の場合やはり一人当たりの負担が少なくなるという点で離職率が下がる傾向にあります。
また、雇用している保育士が園児の割合に対して多ければ「有給休暇を希望通りに取得しやすい」というメリットもあります。
出勤のシフトも柔軟な対応が可能になってきますので、プライベートの両立を重視する人にとっては園を選ぶ特に重要な指針となるでしょう。
【4】職場の雰囲気が良い
人間関係に関しては、その人それぞれで築かれ方が異なるために一概には言えませんが、やはり「明るく笑顔が多い職場」が「雰囲気の良い職場」として魅力的に映る可能性も高くなります。
また保育の現場ですので、最優先が「園児の保育」であるか否かは、人間関係にとって大きな影響を持ちます。
一つの大きな目標を共有している職場であれば、人間関係にモチベーションが左右されることも少なく、職員同士の連携が行いやすい職場となる傾向があるからです。
このような面で「職場の雰囲気が良い」と判断できる職場は、達成感が強いこともあり、結果として離職率が低い園となります。
【5】園見学をして保育園をチェック
これらの条件を求人広告だけから読み取るというのは非常に難しく、そのために有効活用したい制度が「園見学」です。
求職者に園の見学や案内を行う制度で、面接では訊くことが出来ない質問が出来たり、実際の現場を見られるため話を聞くだけでは把握しきれない保育の方針を理解することが出来ます。
求人広告に「園見学可能」と記載されている保育園が現在は多くありますが、記載がなくても見学を許可してくれる園も存在しています。
あまり忙しくない時間を狙い、電話で「御社求人に希望したいため、園見学をさせていただきたい」という旨をストレートに伝えれば、快く承諾してくれるところも多くあります。
そのため、気になる園がある場合は、応募前に躊躇せず見学の依頼を出してみましょう。
ずっと求人が出ている保育園は注意
保育園や保育業界に限ったことではありませんが、ずっと求人を出している職場は、やはり「離職率の低い職場」とは言えません。
特に、無償で求人を出せるハローワークで長期に渡り募集をしている園は、人件費を抑えている可能性があり、給与額が低いという懸念があります。
一時的な転職活動で「長期掲載か否か」という判断をするのは難しいですが、中長期的な転職活動を予定している場合はページなどをメモして、掲載を行っている園の変動などもチェックしてみましょう。
それだけで長期的に求人を出している園を除外できるようになりますので、意識してみてください。
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まとめ
保育園の離職率については、厚生労働省の調査で平均10%という数字が公表されています。ただ、このデータも平成25年のものとなりますし、ここから5年で共働き率などは上昇し待機児童問題が深刻化しています。
飲食などのサービス業に比べると離職率は低いとは言え、資格を持っている人が現場を離れてしまうということが、業界全体にとって深刻な人手不足を引き起こしているというのは否定できません。
離職してしまう原因となる「低賃金」「時間外労働」などが積極的に解消されているかというと、そこまで動きが見られないというのも事実です。
保育士の復職を躊躇わせる「子育てや家庭との両立」という点において、「保育士にとっても子供を預けられる保育園が必要」と負のスパイラルとなってしまい、解決が難しい問題となっています。
ただ、各自治体、保育園がこれらの解消に向け行動を起こしていないというわけでもありません。
保育士が保育士として再就職できるよう、「潜在保育士の就職支援制度」を整えている自治体もありますし「離職率の低い園」として取材を受けている保育園などを参考に業務時間の軽減・給与の改善など園の運営を見直そうと動き出している保育園も多く存在しています。
新しいモデルの保育園を利用し、転職をするにしても保育業界から離れるのではなく、保育士としての経験を新たに活かす職場を選択する方も増加しているのです。